第12章
顔を上げると、神代史人がずぶ濡れで私の前に立っていた。雨水に打たれた髪が、額にぴったりと張り付いている。
制服もびしょ濡れで、水滴が彼の頬を伝って滑り落ちていた。
「どうして戻ってきたんですか?」
私は尋ねた。
「お前みたいな面倒なやつを探しに来たに決まってんだろ」
神代史人は私を引っ張り起こそうと手を伸ばした。
「行くぞ、俺んちに来い」
私は動かず、ただ静かに彼を見つめた。
「今度こそ、本当に家がなくなりました」
私は言った。その声にはどこか解放されたような響きがあった。
「でも、これで結構いいんです。少なくとも、もうあの人たちに殴られなくて済みますから」
...
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