第100章

場は一時、ひどく気まずい空気に包まれた。まるで空気そのものが、わずかに固まってしまったかのように。

矢野智二人は周囲をさっと見回す。ここがいわゆる「家」なのだろうが――陋屋、と言って差し支えない。

壁はむき出しのコンクリート。家具も家電も最低限で、ひと目で全部が見渡せるほどだ。

それより何より、まともな人間が午前十一時にもならないうちから、ここまで泥酔するものか。

玄関先の床には、表面がぼこぼこになった灰皿が転がっている。こんな荒れ方をする男だ。普段から手が出るタイプで、女房に暴力を振るっていても不思議じゃない。真昼間からベッドに潜り込み、仕事をしているようにも見えない。

小原雪美...

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