第103章

「……」

 最初、矢野智はわずかに呆気に取られていた。だが女の顔に浮かぶ露骨な警戒を見て、困ったように笑う。

「羽田さん、何か誤解してませんか」

 ――誤解も何も。

 小原雪美は言葉も出ないまま彼を睨んだ。あの焦げつくような視線で穴が開きそうだったくせに、よく言う。

「さっきの羽田さん、落ち着いていて判断も的確でした。純粋に感心しただけです。どうか気にしないでください」

 とはいえ、室内は人の出入りが多く、今は腰を据えて話す場でもない。矢野智はそれだけ告げると、すぐに踵を返し、陸田暁たちのほうへ合流して作業に戻っていった。

 感心、ねえ。

 小原雪美は自分の身体を改めて見下ろ...

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