第105章

「女の人? 浮気……?」

矢野智は表情ひとつ変えず、視線だけをドアの外へ向けた。この角度ではリビングの様子までは見えない。それでも、林原立川がときおり洩らす軽い咳払いは、薄い壁越しに耳へ届く。

「その日、あいつを見たとき……その女性と、ずいぶん親しげだった?」

声を落として問われる。わざと抑えた低音が、狭い空間のせいか妙に響いて、やけに耳に残った。

小原雪美は居心地悪そうに首を傾げる。

「親しげってほどじゃ……」

車内だった。けれど男女の間に「何か」があるかどうかなんて、案外ひと目でわかる。

それに、関係がないなら、どうしてこんな都合よく長野寒子が実家に帰っている日に限って、林...

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