第110章

矢野智は同意するように、小さくうなずいた。

長野寒子は、あの二本の脅迫電話を受けたとき、木之助の安否を気にかける素振りを一度も見せなかった。生来の薄情さなのか、それとも最初から「木之助は無事だ」と踏んでいたのか。

いずれにせよ、彼女が最初から最後まで執着していたのは、家を担保に入れてでも一刻も早く誘拐犯へ1億を渡すこと――それだけだった。

警察は当初、犯人が要求した1億という額の算出根拠を疑っていた。だが、長野寒子という「内通者」がいるのなら、話はすべてつながる。

1億。林原立川の資産を、きれいに根こそぎ奪い取れる金額だ。家と車を担保に入れ、貯金まで崩して、ようやくかき集められる――...

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