第111章

「警察さん!」

 男の表情があまりにも硬いせいで、長野寒子はすっかり取り乱した。頭の中はぐちゃぐちゃで、どこがどうおかしいのかも分からない。それでも食い下がるように問い詰める。

「木之助は、本当に危ないんですか? 池垣福也っていう、あの外道がもっと金をよこせって? まさか、私の1億を独り占めする気なんじゃ……!」

「最初から信用しちゃいけない人間だったのよ。あんな恥知らずのチンピラが、よくもまあ――」

「欲張りすぎて、腹が裂ければいいのに!」

 ぶつぶつと毒づく声の中で、矢野智がわずかにまぶたを持ち上げた。その目に宿った冷えた光だけで、女の口はぴたりと止まる。

「今の段階で言える...

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