第113章

「身代金の電話は、その後いっさい掛かってきてない」矢野智は、彼女が何を確認したいのか察していた。

たしかに妙だ。さっきまであれほど尊大だった相手が、どうして急に沈黙したのか。

少し考えてから、小原雪美は自信なさげに口を開く。

「……警察の捜査が、向こうの「安全圏」に踏み込んだってことじゃない?」

今のところ、それくらいしか説明がつかない。こちらの動きのどこかで危険を嗅ぎ取り、いったん身を固めた――そう考えるのが自然だった。

「悪い兆しじゃない、ってことか」自分で言っておきながら、慰めとしてはひどく乾いて聞こえる。

雪美は現場経験の長い警察官だ。刑事ではないが、特殊部隊にいた頃から...

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