第144章

「おや? 矢野隊長って、うちの雪美のこと知ってるんですか?」

勝村好美が、わざとらしく目を丸くしてみせた。

――が、その下手くそな芝居のせいで、ドア口に立つ小原雪美と、電話の向こうの矢野智は、そろって謎の沈黙に落ちた。

気まずさが伝染して、空気まで微妙に固まる。

けれど雪美が想像していたような展開にはならない。数呼吸ののち、矢野智は淡々と告げただけだった。

「勝村隊長。そっちの市の行方不明案件がA市側に絡む資料、整理できたら送ってください。改めてこちらから連絡します」

さっきの問いには、目もくれない。

勝村好美はさすがの狸で、目的を果たした満足げな色を目の奥に隠しつつ、白々しい...

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