第157章

「俺のこと、知ってんのか?」若山さんは口元にいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「だ、大学で使ってた教科書、若山さんが編纂に関わってましたから……知らないわけないです」小原雪美はどこか緊張した様子で、手足の置き場に困ったみたいにそわそわする。

若竹浪太郎――国内屈指の刑事捜査の専門家。とりわけ、人の何気ない仕草や骨格の癖から犯人像を追い詰める手腕で知られている。

四十年以上の現場人生で解決してきた大事件は数えきれず、胸の勲章だって掛けきれないほどだろう。

そんな、警察学校の学生たちにとって半ば神話みたいな人物が、いまはたった数平方メートルの守衛室に収まり、鶏のもも肉にかぶりついているのだ...

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