第163章

「矢野隊長、大村方則は今すぐ本局に連絡して、T市の警察と連携して身柄を確保します!」

道野律哉は切羽詰まった声でそう言うと、スマホを取り出して背を向け、通話を始めた。

高橋小春の要求が何であれ、まずは人を押さえる。それが最優先だ。

A市からT市までは車でだいたい三、四時間。確保がスムーズにいって、そこから連れ戻す時間も含めれば――八時間。ぎりぎり間に合う。

この女、本当に容赦がない。そこまで計算に入れている。

向かいの賃貸アパートは、一見すると凪いだ海みたいに静かだった。

あのカウントダウンの、秒針みたいな刻み音さえ無視できるなら。

小原雪美はモニターを睨んだまま、しばらく状況...

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