第173章 番外4

「――雅子さん? 雅子さん?」

何度も呼ばれて、周防雅子はぱちりと瞬きをした。状況が飲み込めないまま、隣にいる相手へ視線を向ける。

耳に入ってくるのは、やたらと騒がしい音楽。照明は落とされ、店内は薄暗い。

冷えたグラスを指先で二度、こすった。琥珀色の酒が揺れて、アルコールで霞んでいた頭が、ようやく少しだけ輪郭を取り戻す。

断片的な記憶を手繰り寄せながら、雅子は改めて隣の小柄な女の子を見た。甘い顔立ちに、深い茶色の長い髪を下ろしている。心配そうに、問いかけるような目。

――そうだ。

桐生明瀬が殺された事件が「終わった」あと、もう半年以上が経っている。

そして、あの正体不明の魂が自...

ログインして続きを読む