第30章

「吉田なな! ちょっと顔を立ててやったからって、調子に乗って私に偉そうに指図できると思うなよ!」

大勢の前で恥をかかされた形になった鳥さんは、腹の底から響く声で怒鳴りつけると、奥歯をぎり、と噛みしめた。遮られている手が、なおも力任せにぐいぐいと下へ押し込まれる。

一秒、二秒、三秒……。

休憩室の空気が、その瞬間だけ凍りついたみたいだった。久美子たちは目を見開いたまま固まる。けれど三十秒以上が過ぎても、二人はさっきの体勢のまま、ぴくりとも動かない。

変わったのはただひとつ。

鳥さんの顔がみるみる赤くなり、首筋に青筋が浮き上がっていくことだけだった。

そのとき、ようやく亮介さんが部屋...

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