第44章

「疑似殺人の直後でも、幻覚剤を摂取した状態で現場にいて、それなりに冷静さと観察力を保っていた」矢野智は、彼女の一瞬のぎこちなさなど気づきもしないふうに、淡々と言葉を継いだ。

「それなのに、ロッカーに露骨に誘導する証拠を入れられた程度のことで、しかも遺族に詰め寄られたくらいで、泣きわめいて取り乱すってのは……おかしいだろ」

小原雪美の目尻が、勝手にぴくりと二度ひきつった。口調自体は至って平常なのに、どうしてもそこに薄い嘲りが混じって聞こえる。

――そういうことか。

胸の奥で、気づかれないように息を吐く。てっきり、もっと別の――。

我に返った小原雪美は手を下ろし、涙の気配など欠片もない...

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