第50章

「えっ……鎌野夢佳? ほんとに、あんたなの!」

 小原雪美が不意に振り返ったのが予想外だったのだろう。声をかけてきた相手はびくりと肩を跳ねさせた。とはいえ表情は崩さない。小崎桃は相変わらず、薄く愛想のいい笑みを顔に貼りつけたまま言う。

「廊下の向こうから見えたとき、似てるなって思って。挨拶しとこうかなって」

 雪美も同じように、作り物の笑みを返す。

「どうしてここに?」

 相手は生物系の学生じゃない。この時間にこの棟にいるのは、どうにも引っかかる。

 桃は手にしたミルクティーを軽く持ち上げ、明るい声で答えた。

「高校の同級生が生物系でさ。今夜、商店街のほうで映画観る約束してて。...

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