第58章

小原雪美は目の前の医師を見つめた。相手の口が忙しなく開いては閉じるのを眺めていると、胸の奥に沈むものがあって、感情がうまく言葉にならない。

次から次へと別の人間になっていく。けれど、どこへ行っても逃れられないものがある。鼻先にまとわりつく濃い消毒液の匂いと、視界の端に刺さるような、あの厳しい深い青。

ふいに、吐き気がこみ上げた。反射的に手を上げ、口元を押さえる。

医師はその様子に気づくと、首を振って小さくため息をつき、念を押すように言った。

「しばらくは、しっかり休んでください。脳震盪ですからね……軽度とはいえ、油断は禁物ですよ」

「……ありがとうございます」

小原雪美はベッドに...

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