第60章

「ごめんなさい……」

ゴミ箱を抱えて吐き終えた小原雪美は、気まずそうにそう呟くと、ティッシュを一枚引っつかんで口元を拭った。

矢野智は丸椅子から立ち上がり、ふらりと病床のそばへ歩み寄る。

影がすとんと頭上に落ちた。小原雪美が見ている前で、矢野は医師室の呼び出しボタンを押す。続いて聞こえてきたのは、聞き慣れた男の声だった。

「……どうやら、これ以上の聴取は周防さんの体調がもう少し回復してからになりそうですね」

「それまでの間、警察としては周防さんの行動をある程度制限させていただきます。ご理解ください」

死体を発見した以上、何の措置も取らずに、事件の被疑者を病院内で自由に歩かせるわけ...

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