第63章

 ちょうど彼女のいちばん近くにいたのは道野律哉だった。反応はやたらと速く、手を伸ばして支えようとしながら、気遣わしげに声をかけてくる。

「周防記者、足元に気をつけて」

 その声に、前を歩いていた二人も気づいたらしい。視線が二本、自分に落ちたと察した瞬間、小原雪美は腹を括って、ぎこちない笑みで受け流した。

「ありがとうございます。土の道、ちょっと歩きにくいだけですから。気をつけます」

 この小さな騒ぎを、矢野智と陸田暁は特に気にした様子もない。視線を戻すと、二人は相変わらず小声で「キャンパス迷魂殺人事件」について話し合い、彼女の心臓をひやりとさせたあの名前には、もう触れなかった。

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