第65章

気づいた瞬間、彼女は素早くスマホを取り出し、遠ざかっていく配達員の背中に向けて何枚か連写した。

病院にいたとき、口実を作って矢野智の連絡先はすでに確保してある。迷うことなく、小原雪美は周防真美子のLINEから相手を追加した。

会社へ向かうタクシーに乗り込んでしばらくして、ポケットの中のスマホが「ピコン」と鳴る。画面を開けば、見慣れたアイコンがいちばん上にすっと表示されていた。

小原雪美は無言で口の端を引く。……矢野智のSNS拡大に、私って相当貢献してるよね。

そう思いながら手は止めず、さっき撮った写真を手早く送信する。最後に一言だけ添えて。

「赤い上着」

……専門のことは、専門の...

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