第76章

 夜八時前。小原雪美は、ようやく迎えの車に乗り込んだ。

 ドアを開けて後部座席に腰を落ち着けた途端、助手席の陸田暁が身体をひねって振り返る。

「うわ、周防記者。やるじゃん。仇みたいな相手に会いに行って、ちゃんと手がかり持って帰ってくるとか」

「矢野隊長もさ、村木郁美の聴取を終えた時点で『なんか変だ』って言ってたんだよ。署に戻ってから班総出で交友関係を洗い直してさ。そしたら、笹村生化学工業グループの社長と――怪しい繋がりが出てきた」

 そこまで言って、陸田の顔がすっと引き締まる。

「……笹村だぞ、周防記者。そこまで踏み込む気か?」

 運転席の矢野智也が、淡々と会話を引き取った。

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