第9章

翌朝。

エレベーターを降りて中本デザインの入口をくぐった瞬間、小原雪美は社内の空気がどこかおかしいことに気づいた。

起きてすぐ取引先から電話が入り、出社が少し遅れたせいで、何が起きたのかは掴めていない。

席に戻って腰を落ち着ける間もなく、手元の電話がピッと鳴った。受話器を取って表示を確認した彼女は、反射的に給湯室のほうへ顔を向ける。

ドア枠にしがみつくようにして、津下菜美がこちらへ手招きしていた。

小原雪美は思わず笑い、素直に自分のコーヒーカップを持ってそちらへ向かう。案の定、冷蔵庫の横には小岡弘子が立っていた。

津下菜美はそっとドアを引き寄せ、給湯室は防音が弱いのを気にして、声...

ログインして続きを読む