第93章

「間違いない。そいつだ」矢野智が断言するように同調した。

陸田暁は返事もせず、小原雪美の手にあった用紙をひったくるように受け取ると、そのまま部屋を飛び出していった。容疑者につながる糸口が手元にある――そうなれば、一秒だって待てるはずがない。

ゆっくり閉まっていく扉を見送ってから、矢野智は机のそばに立つ少女へ視線を戻す。

「まさか、田浦建明たちの手から逃げ切った生存者がいるとはな」

小原雪美はわずかに眉を寄せ、腑に落ちない口調で言った。

「……どうして、警察に通報しなかったんでしょう」

逃げ延びた直後に通報していれば、田浦建明らはとっくに法の裁きを受けていたはずだ。この二年のあいだ...

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