第94章

ほどなくして、矢野智は部下を引き連れ、小原雪美のいるフロアまで上がってきた。

陸田暁と道野律哉が素早く駆け寄り、三人は顔を寄せ合って何事か短く言葉を交わす。

小原雪美は休憩室の入口に立ち、ドア枠にもたれたまま遠巻きにその様子を眺めていた。

そのとき、エレベーターで連行されてきた容疑者が、彼女の視線に気づいたのか――ゆっくりと目を上げ、こちらをまっすぐ射抜くように見てきた。

視線がぶつかった瞬間、背筋がひやりと冷える。

毒でも塗り込めたみたいな目。そこには、人間の体温らしきものが一欠片も見当たらなかった。

それでも小原雪美は目を逸らさない。どれだけ凶悪で、どれだけ人の心が欠けていよ...

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