第95章

時が、この瞬間だけ凍りついたみたいだった。

離れた場所にいる二人が、それぞれスマホを握ったまま――示し合わせたわけでもないのに、同時に沈黙へ落ちる。

現場のほうで陸田暁が階段室から飛び出してきたのを見て、矢野智がようやく口を開いた。低い声で言い含める。

「俺はいまから病院へ向かう。あとで陸田暁が戻るから、合流したらお前の考えを詳しく話してくれ」

言い終えるか終えないかのうちに、小原雪美が返事をする暇もなく、耳元に「ツー、ツー、ツー」と無機質な通話終了音が流れた。

向こうがいまどんな状況なのかは分からない。けれど、さっき受話口の奥でかすかに聞こえた喧騒だけで、てんやわんやの光景が脳裏...

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