第百十八章 頭おかしいのか?

「やめなさい!」

落ち着き払った、それでいて有無を言わせぬ声が、ふいに響いた。

騒がしかった空気が、冷水を浴びせられたみたいに一瞬で冷える。

ざわついていた招待客が、反射的に道をあけた。

そこへ現れたのは、小柄な体に深いモスグリーンのドレスをまとった大奥様だった。髪は一糸乱れぬほどきっちりと結い上げられ、耳元には真珠のイヤリング。優雅さの奥に、揺るがぬ威がある。

青木陸斗の祖母、浅倉史子――。

史子は星野奈菜の前まで進むと、感情を見せない目で静かに見下ろし、凛と告げた。

「その刃物を下ろしなさい。――あなた、私の孫の子を身ごもったと言ったわね。証拠は?」

「証拠? お腹の中に...

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