第20章 五百万だけだ

星野蘭が星野奈菜の腕をぐいっと掴んだ。

耳元で何かを囁く。

星野奈菜の昂ぶりが、すっと冷める。

「星野彩実、あんた頭おかしいんじゃないの。私はバカじゃない。この店のドレスはね、どれも何十万どころか何百万よ。気が触れたふりして払わないつもり? ふざけないで。店が通報すれば、これだけで一生ぶち込まれてもおかしくないんだから。覚悟しなさいよ!」

星野彩実が牢屋に入る――そう想像しただけで、星野奈菜は「今ここで殴らない自分、優しい」と本気で思った。

それに切られたドレスだって、店にはデザイナーがいる。すぐ直せるはず。

壊れたのは店内なのだから、YACが追加で請求してくることもないだろう...

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