第211章 行って帰らぬ

「花村さん、俺たち、ただの冗談で……」

川﨑大世の声は震えきっていた。

「冗談?」

花村秋人は鼻で笑う。

「他人の名誉と尊厳をネタにして笑ったんだ。……代償は払ってもらう」

浅倉彩実の手を取ると、花村秋人は踵を返し、三番線の線路へ向かって歩き出した。背中越しに、氷みたいな一言だけ残す。

「田中友里子」

田中友里子が前に出て、ひらりと手を振る。すると、さっきまで気配すらなかったボディーガードが六人、ぴたりと現れた。視界ごと塞がれ、三人の懇願も届かない。

屋根の穴から落ちた陽が、振り返った浅倉彩実の頬を照らす。彼女は花村秋人の横顔を見つめ、そっと口角を上げた。

——彼がいるなら...

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