第25章 花村家の人間ではない

ワルツが流れ出した。

そこでようやく、皆が思い出す。

今日は名門令嬢サロンの優勝者、準優勝者、3位の戴冠式――そのまま開幕のダンスへ移るのだと。

星野彩実が花村裕子に促され、ステージ中央へと導かれる。

ヴァイオリニストが弓を走らせ、会場の空気がふわりと甘く震えた。

独身の男たちは一斉に腰を折り、手を差し出す。

女神の指先を待つように。

彩実が浅倉拓実の前まで来たとき、拓実は嬉しそうに親指を立てた。

――合図。

来る前に二人で決めた暗号だ。

『彩実はまだ18だ。早恋はダメ。だから今日の舞踏会で踊る相手は俺だけ』

彩実も、この年で恋愛をするつもりはなかった。拓実の言う...

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