第50章 まだオス猫?

車窓の外から、潮の匂いを含んだ湿った海風がぶわりと吹き込んでくる。ハンドルを握る指が、わずかに強ばった。

自分でも理由がはっきりしない。ただ今この瞬間、どうしようもなく星野彩実に会いたかった。親友の妹を見つけるためなのか、それとも――自分が会いたいだけなのか。

そのころVIPラウンジでは、星野彩実がアーズベルクの「爪でメニューをがりがり引っかく」姿を眺めていた。

と、外からばたばたと慌ただしい足音が近づいてくる。

顔を上げた彼女は、夜の海みたいに深い瞳と真正面からぶつかった。

花村秋人が、入口に立っていた。額にはうっすら汗。スーツの上着は肘に引っかけたまま、いつもきっちり整ってい...

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