第52章 小賢しい自己満足

浅倉拓実は仏頂面のまま星野家の別荘へ足を踏み入れると、室内を上から下までじろじろと見回し始めた。調度品だけではない。隅に置かれた犬の餌皿にまで視線を落とし、二度、三度と確かめるように見ている。

星野夫婦は、それまでの彩実への態度が嘘みたいに、浅倉拓実にはやけに愛想がよかった。けれど拓実は取り合わない。

ソファにどかっと腰を下ろし、脚を組む。星野蘭が差し出してきたコーヒーを見下ろすだけで、手を伸ばさない。

(やっぱり名家の御曹司ね。そう簡単に懐柔できない)

星野蘭は内心で舌を巻いた。

(本当に奈菜を気に入っていたとしても、この上からの空気は崩さない……)

だが侮辱されたとは思わなかった。...

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