第57章 それは何の怪物だ?

「父さん、お腹すいてない? 母さんは……どうだった?」

本気で怒るつもりだった浅倉啓太は、その一言を聞いた瞬間、胸の奥に溜めていた熱がすっと引いた。

腹が立っていたのは、星野彩実が容赦なく出ていってしまったことだ。

なにせ啓太は筋金入りの娘バカだ。星野彩実の足が速すぎたうえに、浅倉友紀子が急に体調を崩したせいで追いかけられなかっただけで、あの場で一緒に浅倉家を出る気すらあった。

「家出」に対してそれらしく「怒ってみせる」つもりだったのに――こうして娘の顔を見た途端、もう怒れない。

「彩実。母さんは大丈夫だ。ただ……お前のことを心配してる。帰ろう、いっしょに」

星野彩実は首を横に振っ...

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