第64章 腐れ縁の恋愛呪術

その刹那、星野彩実ははっきりと見た。ドールトンの周囲から、粉を混ぜたような黒ずんだ霧がふわりと立ちのぼり、ペンタグラムの光に灼かれたかのように、瞬く間に掻き消えていった。

――やっぱり。腐れ縁の恋愛呪術だ。

星野彩実はぐるりと視線を巡らせる。階段口に立つ女中がひとり。片目を斜めにしてこちらを窺うその顔つきは、まるで泣きっ面の仏……いや、喪に服した人間のように陰気だった。

肌は蝋のように黄ばみ、髪は薄く、背丈はせいぜい160ちょっと。しかも、少し肉付きがいい。

こんな目立たない女が、ここにいること自体が妙だ。

なにせダトゥ府は京清市最高行政長官の邸宅だ。ここでは、たとえ蟻でさえ――よそ...

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