第6章

私と葵は、一時的に病院の寮へと引っ越した。

「本当に家、売っちゃうの?」

麻衣がタバコに火をつけ、一口吸い込んだ。

「うん」

私はスマホを取り出し、仲介業者にメッセージを送る。

「家はもう直接売って、彼と代金を折半するつもり」

麻衣は溜め息をついた。

「まあ、いいけど。あんた自身がちゃんと納得してるなら」

「どうせあの家には、思い出せるような価値のあるものなんて何もないし」

私は落ち着いた様子で送信ボタンを押した。

「これからは私と葵、東京でちゃんと生きていくから」

「じゃあ私はどうなるのよ!」

と麻衣が訊く。

私は笑って言った。

「いつでも私と葵に...

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