第十二章

東雲芽依は口角を吊り上げ、挑発的な笑みを浮かべた。

綾瀬茉莉は、ウェイターが置いていった水を一口含み、喉を潤した。

「勝算のない戦いはしない主義なの」

「これを見て」

綾瀬茉莉はそう言うと、供述調書のコピーを東雲芽依に突き出した。

東雲芽依がその文字を目で追うたび、心臓が早鐘を打つ。手入れされたつけまつげが微かに震え、その心の揺らぎを露呈していた。

紙面には『柊紗菜の指示』『東雲グループ名義のカードからの送金』といった文字が並び、さらに『私の婚約者をたぶらかすあのクズに、思い知らせてやって』という生々しい言葉まで記されていた。

それらの文字は、まるで焼き鏝(ごて)のように彼女の...

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