第十六章

母親が目を覚ます時間は、日に日に短くなっていた。

最初は一日に一度は意識を取り戻していたが、今ではそれも不定期になり、いつ目覚めるか予測がつかない状態が続いていた。

綾瀬茉莉自身も、四六時中病院に張り付いているわけにはいかなかった。

最後に意識の清明な母親と話をしたのは、もう一ヶ月も前のことだ。

心電図モニターが規則的な電子音を響かせている。それはまるで、無言の返答のようだった。

今日も、母は目を覚まさないだろう。

綾瀬茉莉はそう判断し、母の痩せ細った体を蒸しタオルで丁寧に拭いた。

洗面器を持ち、立ち上がって帰ろうとしたその時だった。

「茉莉……」

耳元で、微かな、しかし懐...

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