第189章

死神からの招待状のように、耳をつんざく火災報知器のベルが鳴り響いた。

ロマンチックで穏やかだったレストランの雰囲気は、瞬く間に引き裂かれる。

獰猛な巨獣のごとき黒煙が店内から噴き出し、空気を食らい尽くしていく。視界は急激に悪化し、灼熱の熱波が顔面を打った。

「茉莉、俺に掴まれ! しっかりとな!」

霧生澪の声は、この阿鼻叫喚の渦中にあっても、驚くほど冷静で沈着だった。

彼は綾瀬茉莉の口元を手で覆い、彼女の体ごと抱きすくめるようにして、自身の肉体を盾に煙と群衆の衝撃を遮断する。

霧生澪は瞬時に状況を見極めた。メインエントランスの方角からは、すでに逃げ場を失った人々の絶叫が聞こえる。火...

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