第三十章

翌朝、綾瀬茉莉は時間通りに出社した。

「綾瀬お嬢さん、霧生家へようこそ」

綾瀬茉莉は社員証を受け取った。そこに印字された「社長室実習アシスタント」という文字に、指先が熱くなるのを感じた。

配属された席は、社長室の外にあるオープンスペースだった。そこは他の二人のアシスタントと共有する空間でもある。

綾瀬茉莉が席に着くなり、四方八方から値踏みするような視線が突き刺さった。

だがそれも一瞬のこと。すぐに視線は消え、周囲は慌ただしく業務に戻っていく。

二人のアシスタントも綾瀬茉莉を見て見ぬふりをし、氷のような冷たさで彼女を無視した。

綾瀬茉莉は気にする素振りも見せず、静かに...

ログインして続きを読む