第三十五章

すぐに、柊紗菜は込み上げてくる不安をねじ伏せた。

たとえ彼女が知っていたとして、それがどうしたというのか。

綾瀬茉莉の口元には、極めて薄い笑みが浮かんでいた。

彼女は分かっていたし、柊紗菜もまた、分かっていたはずだ。

そうでなければ、柊紗菜がわざわざ入院したばかりの病室に押しかけてくるはずがない。

あの裏帳簿は、おそらくすでに柊家の手に戻っているのだろう。

そして、茉莉が証拠を集めようとしていたことも、柊家の知るところとなった。

柊紗菜がこうして嘲笑いに来たことこそが、何よりの証明だ。

だが、それがどうした?

帳簿は一度手に入ったのだ。二度目も、三度目だってある。

柊家が...

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