第三十九章

今は自分の潔白を主張すべき時ではない。綾瀬茉莉はただ視線を伏せ、掌に爪が食い込むほど強く拳を握りしめた。

「私も同感です」

周囲からも同調する声が上がる。

「データミスは数億の損失に直結します。新人とはいえ、許されるレベルの初歩的なミスではありません」

「霧生家において、長らくこれほど杜撰な事態は前代未聞です」

「会社は慈善事業じゃない。たかがインターン一人のためにリスクを冒す必要はないでしょう」

声に出さずとも、周囲の眼差しには多かれ少なかれ、他人の不幸を喜ぶような嘲笑の色が混じっていた。

以前、霧生澪が杜若明日香を処罰した一件は周知の事実だ。その煽りを受け、まだインターンで...

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