第四十章

杜若明日香の顔色が、瞬く間に蒼白へと変わる。彼女は咄嗟に自分の鞄を抱え込むようにして守り、金切り声を上げた。

「綾瀬茉莉! 気が狂ったの!? 鍵を返して!」

綾瀬茉莉は指先で鍵をくるりと回し、唇の端を冷ややかに吊り上げた。

「何をそんなに急いでるの? 同僚同士、少しお話しするくらいいいでしょ?」

「誰がアンタとなんか!」

杜若明日香は手を伸ばして奪い返そうとするが、綾瀬茉莉はそれを軽々と躱す。

鍵さえあれば車で逃げられると考えていた杜若明日香にとって、綾瀬茉莉のこの執拗さは想定外だったようだ。

「東雲芽依からいくら貰った?」

綾瀬茉莉は単刀直入に切り込んだ。

「社用PCに細...

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