第四十三章

綾瀬茉莉は会議室のガラスパーティション越しに、霧生澪の冷ややかな横顔を盗み見ていた。

長くしなやかな指が、一定のリズムでテーブルを叩いている。彼は無表情のまま、各部門からの報告に耳を傾けていた。

「現在、世論は制御不能な状態です。サクラによる誘導のスピードが凄まじく、通常の広報手段では焼け石に水でして……」

広報部長が額の冷や汗を拭いながら報告する。

「世論を誘導している黒幕すら特定できないのか?」

霧生澪が眉をひそめる。

「現在、鋭意調査中ですが……」

霧生澪はそれ以上何も言わず、ただ静かに頷いた。その沈黙に、同席者たちは息を呑み、焦燥感を募らせていく。

「霧生社長、それか...

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