第四十四章

霧生澪は顔も上げず、手にした万年筆で書類に鋭利な線を走らせた。

「上出来だ。……他に用は?」

その冷淡な反応に、東雲芽依の心臓が早鐘を打つ。だが彼女はすぐに表情を取り繕い、ゆっくりと彼に歩み寄った。

「ツイートしたの」

彼女は限定品のバッグを傍らに置き、何かを驚かせないように、そっと優しく声をかけた。

「ネットの噂があまりに酷いから、見るに見かねて発信したのよ。……怒らないでちょうだいね?」

万年筆の動きが紙の上でふと止まった。霧生澪はようやく視線を上げた。

その墨を流したような漆黒の瞳には、何の感情も映っていない。

「不要だ」

その視線に心臓が跳ねたが、東雲芽依はすぐに気...

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