第四十五章

間もなくして、綾瀬茉莉もまた衆人の視界に現れた。

彼女は周囲の視線がどこか奇妙なものを含んでいることに気づいたが、顔を上げると、それらの視線は蜘蛛の子を散らすように引っ込んでしまった。

「お先に失礼するわ」

東雲芽依は彼女の姿を認めるなり、まるで天敵に出くわした小動物のように怯えた表情を見せた。そして、日頃から取り入っている数人の女性社員に口紅を数本押し付けると、逃げるようにその場を立ち去った。

「あの東雲家のお嬢様ともあろうお方が、あんなに媚びへつらうなんて見たことないわ」

「本当ね。いじめられて精気まで吸い取られたみたい。可哀想に」

「ちょっと、声が大きいわよ。あの方に聞...

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