第四十六章

レストランの照明が墨谷蓮の顔に斑らな陰影を落とす。彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、綾瀬茉莉の皿に魚を取り分けた。

「この店の看板料理だ。食べてみてくれ。そんなに辛くないから」

真っ赤な油の上に、びっしりと花椒が浮いている。綾瀬茉莉はその魚肉を凝視したまま、動こうとしなかった。

墨谷蓮の顔に気まずさが過ぎる。

「辛いのはダメだったか? 知らなかったな」

綾瀬茉莉はグラスの縁を指でなぞりながら、愛想笑いを浮かべた。

「私、辛いものは全然ダメなの。大学のサークルの飲み会で何度も言ったはずだけど」

「構わないさ、食べてくれよ」

綾瀬茉莉は微笑んで、別の野菜料理に箸を伸ばした。

彼...

ログインして続きを読む