第四十八章

綾瀬茉莉がふと顔を上げると、そこには霧生澪の前で、いかにも庇護欲をそそるような、か弱げな姿を演じる綾瀬空が立っていた。

彼女は眉をひそめたものの、足を止めることなく、綾瀬空に一瞥もくれずに二人の脇を通り過ぎようとした。

「綾瀬」

綾瀬茉莉は霧生澪の側まで歩み寄った。

「霧生社長」

「君の妹か?」

綾瀬茉莉は綾瀬空をちらりと見て、微かに口角を上げた。

「従妹です。親しくはありませんが」

綾瀬空の顔から笑顔が剥がれ落ちそうになる。彼女の爪が、掌に深く食い込んだ。

綾瀬茉莉、このクズが……。せっかくの機会に私を紹介するどころか、急いで関係を切り捨てようとするなんて!

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