第五十一章

「まだ消えないつもりか? なら、手加減はしない」

「ほう?」

男の声は低く、危険な響きを帯びていた。

「面白い。やってみろよ」

だが、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、霧生澪の重い拳が再び唸りを上げた。

拳は男の腹部に深々と突き刺さる。

鈍い音が響き、男は「ぐっ」と空気が漏れるような声を上げた。エビのように体を折り曲げ、床に崩れ落ちると、そのまま激しくえずき始めた。

「よ、よくも殴ったな……!」

男は苦痛に喘ぎながらも、なおも食い下がろうと睨みつける。

「警察だ! 今すぐ警察を呼んでやる!」

霧生澪は無言のまま、革靴で男の背中を踏みつけた。

容赦のな...

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