第五十四章

綾瀬茉莉の声は震え、途切れ途切れになっていた。

涙が止めどなく溢れ、しょっぱい液体が口元に流れ込む。

綾瀬茉莉は膝に顔を埋め、肩を激しく震わせていた。

自分が今、どれほど無様な姿を晒しているか分かっていた。だが、この隔絶された鉄の箱の中で、誰に見られるというのだろう。

意識が遠のきかけたその瞬間、突然エレベーターの外から慌ただしい足音が聞こえてきた。

「誰かいるか?」

低く、聞き覚えのある男の声が金属の扉越しに響いた。

綾瀬茉莉はハッと目を見開き、自分の耳を疑った。

「います! ここにいます!」

彼女は枯れた声で必死に叫んだ。

「綾瀬茉莉です! エレベーターが少し落ちて…...

ログインして続きを読む