第五十五章

病院の照明は、目を細めてしまうほどに刺々しく煌めいていた。

消毒液の特有の臭いが鼻腔を突き、綾瀬茉莉は無意識のうちに霧生澪の懐へと身を縮めた。

その直後、彼女は自分の行動にハッとした——まさか自分が、この男に庇護を求めているなんて。

「下ろしてください」

彼女は小声で言った。その声には、まだ微かな震えが残っている。

「歩けますから」

霧生澪の歩調は少しも緩まない。

「足が震えている」

綾瀬茉莉が視線を落とすと、指摘された通り、自分の両足が意思に反して小刻みに震えているのが見えた。

エレベーターの中で味わった恐怖は、潮が引いた後の痕跡のように、身体の芯にへばりついて離れようと...

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