第六十一章

霧生澪の瞳孔が、わずかに収縮した。

ベッドで安らかな寝息を立てているその顔は、紛れもなく綾瀬茉莉だった。

泥酔した頬はほんのりと朱に染まり、長い睫毛が照明の下で淡い影を落としている。呼吸は深く、穏やかだ。

普段は張り詰めている口元も今は緩み、どこかあどけなさを覗かせていた。

霧生澪はベッドサイドに立ち、その寝顔を灼熱のような視線で見つめた。

先ほど藤波から受けた報告が脳裏をよぎる――東雲芽依に相当飲まされたらしい。なるほど、これでは泥酔するのも無理はない。

男の美しい指先が彼女の額にかかるほつれ髪をそっと払い、指先が肌に触れた瞬間、感電したかのように素早く手を引いた。

「810...

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