第六十二章

「あ、あの……昨日の夜……」

綾瀬茉莉は唇を噛み締め、恐る恐る口を開いた。「私たち……」

「何もなかった」

霧生澪はさっと身を起こした。

「お前が俺を畑のキノコだと言い張って、無理やり収穫しようとしてきたこと以外はな」

綾瀬茉莉は安堵の息を吐いたが、同時に胸の奥がちくりと痛んだ。

しかし謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、霧生澪のシャツの襟元に、怪しげなシミがついていることに気づいた。

「霧生社長、その服……」

霧生澪は自分の胸元を見下ろし、平然と言い放った。

「昨日の夜、お前が『これはウサギさんのためのニンジンジュースだ』と言って擦り付けてきたものだ」

綾瀬茉莉は絶望のあ...

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