第六十三章

綾瀬茉莉は断ろうとしたが、ふと顔を上げると、少し離れた場所に霧生澪が立っているのが目に入った。彼は藤波秘書と話しており、山登りになど微塵も興味がなさそうだ。

小林が彼女を一瞥する。

「綾瀬さん、何か用事でもあるの? やめなよ、一緒に行こうよ!」

流星が見られるなら、願い事ができるかもしれない。それに、霧生澪はこういうイベントには興味を示さないはずだ。

彼女は安堵の息を漏らし、何かに操られるように頷いた。

「……行きます」

夜十時、山の麓。

夜の帳が下り、山間の気温は急激に下がっていた。

綾瀬茉莉は薄手のニットをしっかりとかき合わせ、列の最後尾についてゆっくりと登り始めた。

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